医学部合格はゴールではなく、スタートです。共に勉強している仲間との時間を大切にすることも、良い医師になっていく将来につながる一歩です。

永田圭 先生 久留米大学病院 耳鼻咽喉科・頭頸部外科

  • 出身大学久留米大学医学部医学科卒業
  • 出身高校修学館高校

メッセージ message

どんな医師になりたいのか、明確なビジョンを持ってほしい

皆さんは医療人になることを志して日々勉強を頑張っておられると思いますが、大学に入ることはその第一関門に過ぎません。入学して6年間学び、卒業試験、国家試験をパスして医師免許を貰い、それからやっと本当の意味でのスタートです。進級判定も以前に比べて非常に厳しく、道半ばで脱落していく人もたくさんいます。理想と現実は大きく異なり、医師になってからも予備校時代とは比べ物にならないほど辛く、きついことがたくさんあります。生半可な理由で医師を志しているのであれば、他の道を選んだほうが賢明です。自分はどんな医師になりたいのか明確なビジョンをしっかり持ってください。それが備わっていてこそ、様々な難関を乗り越えていくことができるでしょう。

患者さんや医療仲間と優しい心でコミュニケーション

もうひとつ、心に留めておいて欲しいことは、医師は診察や治療を行う以前に、成熟した人であることです。患者さんや同じ医療に携わっている仲間と良好なコミュニケーションがとれなければ、互いの信頼が得られず、信頼なくして良い医療はできません。そして、病気で苦しんでいる人の気持ちを汲んであげることができ、治療の甲斐なく死期が迫っている患者さんと向き合わなくてはならない時は、その人が辿ってきた人生や家族に思いを馳せることができる優しい心が求められます。それは日常生活の中から培われるものです。ともに勉強している仲間との時間を大切にしてください。勉強仲間とはライバルでもありながら、互いに相手を尊敬し思いやる関係を築いていってほしいと思います。いつか皆さんと一緒に、同じ医療に携わる仲間として働ける日が来ることを願っています。

頭部にある感覚器や機能の全領域をカバーする耳鼻咽喉科

私は耳鼻咽喉科に進みましたが、多くの方にとって耳鼻科と言えば、「耳掃除」「鼻吸引」「花粉症の治療」などのイメージを持たれているのではないでしょうか。確かにクリニックへ行くとそうかもしれません。しかし、耳鼻咽喉科は首から上、眼球と脳を除くすべての領域をカバーする重要な診療科なのです。頭部には、嗅覚・味覚・聴覚・平衡覚や嚥下・発声・呼吸など、大事な感覚器や機能が集中していますが、どれが欠けても生きていく上で障害となるものばかりです。機能障害がある場合はそれぞれ投薬で治療したり、必要に応じ外科的治療を行います。最近の話題としては、両側重度難聴の方には人工内耳を蝸牛に留置し、聴覚を取り戻すこともできるようになりました。

今後のテーマは治療と機能温存の両立

現在、私が勤務している派遣病院に耳鼻咽喉科医は私一人しかおりませんが、頭頸部領域の手術を数多く手掛けています。甲状腺腫瘍、唾液腺腫瘍、鼻副鼻腔腫瘍、咽頭腫瘍の切除や、扁桃肥大に対する手術を行っています。最近は喫煙や飲酒の影響で悪性腫瘍も増えてきています。初期であれば放射線や化学療法で治療することもできますが、進行すると喉頭癌では患部の全摘、舌癌や歯肉癌など口腔癌では切除後に、腕や腹部の皮膚・血管付きの筋肉組織を使う有茎皮弁やプレートによる再建、副鼻腔腫瘍は頭蓋底手術など、かなり大掛かりな手術が必要となってきます。私たち耳鼻咽喉科医は保存的治療もできますし、外科的に治療することもできるわけです。また、感覚・運動機能を改善する治療も行いますが、残念ながら、音声の喪失、嚥下・嗅覚障害、整容面の問題、また進行副鼻腔癌では眼球摘出も必要になるなど、大きな機能喪失を伴うこともあります。耳が聴こえるようになる、声が出るようになるなど機能が改善すれば患者さんも大変喜ばれますが、治療のためとはいえ機能が犠牲になってしまった患者さんを前にすると複雑な気持ちになります。治療と機能温存の両立が今後の大きなテーマなのです。耳鼻咽喉科に少しでも興味を持っていただければ幸いです。