患者一人一人の人生にどこまで懸命に寄り添えるか。医師は感動とやりがいのある素晴らしい仕事です。みなさんと共に磨き合うその日が楽しみですね。

井口俊博 先生 岡山大学病院 消化器内科

  • 出身大学岡山大学医学部医学科卒業
  • 出身高校英数学館高校

メッセージ message

私は平成11年4月から1年間、富士学院でお世話になりました。実際には高校生の時から夏期講習や冬期講習を受講していたので、2年強と言った方が正確かもしれません。富士学院卒業生として、勤務医9年目のドクターとして、医の道を志して頑張っているみなさんに一言、メッセージを送りたいと思います。

最新の医療情報を常に吸収し、人の生死に対峙し続ける覚悟を

私の言いたいことは二つあります。一つは、「医師としての現実は厳しい」ということ。現在、医師の専門性、つまり質が非常に問われます。常に新たなエヴィデンスが生まれ、それを基に最善の検査、治療が刻々と変わる時代なのです。さらに、インターネットやテレビ等で様々な情報が容易に得られる時代だけに、常に大勢の人々の監視の目にさらされながら、常時勉強をし続け、新たな情報を吸収し続けなければいけない職業をみなさんは志望しているのです。場合によっては理不尽なクレームへの対応に追われることもあります。最終的に人を相手にしない職業はありませんが、医師は場合によっては目前で人の生死にかかわる問題に対峙し続けることになり、その負担の大きさ、重さはたやすく想像できると思います。実際に医師になり、あるいは医学生の段階でそうした現実に直面し、離職したという話も時々聞きます。もちろん、そこまで深刻に考えてなくても医師にはなれるわけですが、それ相応の覚悟は必要ということです。

患者の人生に寄り添う感動とやりがいに満ちた仕事

もう一つは「それでも医師という職業はやりがいのあるもの」ということです。少し厳し目に現在の医療について述べましたが、程度の差はあれ、仕事と名のつくものには責任が伴うのはいずれも同じです。その中でも医師は素晴らしい職業であることに間違いはありません。生命はいつか必ず終わるものであり、必ずしも患者全てを救えるわけではありませんが、その過程に精一杯関わり、患者の人生に寄り添うことができた時、それを実感すると思います。医師への道のりはまだ遠いかもしれませんが、今、懸命に一つのことに打ち込むことはきっと、将来の大きな財産になると思います。そして、周りの友人をよきライバルとして仲良く頑張れば、今のみなさんの苦労はきっと花開くと信じています。みなさんの夢が叶い、そして、よい医師人生を歩まれることを願っています。

完治しにくい炎症性腸疾患。根拠に基づくEBMだけでなく患者の物語に沿うNBMへ

現在、私は消化器内科、中でも特に炎症性腸疾患を含めた小腸・大腸疾患の診療に当たっており、外来、検査、病棟など充実した日々を送っています。炎症性腸疾患というのは主にクローン病、潰瘍性大腸炎のことを指し、世界中、特に日本を含めた先進国で急増しています。みなさんもこれらの病気で悩んでいる方にこの先、必ず出会うと思います。現時点で完全には治癒しない難治性の病気で、原因も完全には分かっておらず、難しい疾患であることは間違いありませんが、それゆえに医師としての力量を問われる分野でもあり、やりがいを感じています。若い方にも多い疾患だけに、進学、結婚、妊娠、就職など様々なNarrative(ナラティブ=物語)を持っており、より患者の人生に寄り添った治療を考えることの重要性を日々実感しています。これからはEBM※1だけでなく、NBM※2という治療方針がクオリティ・オブ・ライフを守るためにも大切なのです。

「いまやらねばいつできるわしがやらねばだれがやる」

岡山大学病院消化器内科ではこの他、小腸検査としてバルーン内視鏡、カプセル内視鏡も扱っています。いずれも比較的歴史は浅い検査なので、新しい発見、知見も多いです。消化器内科は内科でありながら、色々な手技が多く楽しいですね。いずれ、より専門性の高い検査、治療が求められるようになっており、それを一人でこなせるようになるとうれしい反面、その責任の重さも感じる毎日です。みなさんの中から一緒に仕事ができる仲間が出てくればとてもうれしいです。どこかでお会いできる日を楽しみにしています。最後に、実際に私が受験の面接で答えた座右の銘をみなさんに送ります。「いまやらねばいつできるわしがやらねばだれがやる」。頑張ってください。